町議会議員選挙のウグイス嬢

短期アルバイトでとても「おいしかった」お仕事は、私が学生のとき、選挙権を得てすぐに行われた町議会議員選挙のウグイス嬢のアルバイトです。地元の喫茶店のお客様が選挙のウグイス嬢を探しているとの話でした。その喫茶店の娘さんと友人である私にそのアルバイトの話が舞い込み、内容を理解しないまま仕事をすることとなりました。

月曜日から金曜日の5日間、朝8時から14時までのアルバイトでした。町議会議員の候補者の方は初めての立候補でした。そのため応援する方々も初めてで、どのように選挙を組み立てていくかが手さぐり状態だったようです。

初日の月曜日、どういうことをすればいいか全くわからず、選挙事務所となる候補者のご自宅から選挙カーに乗って出発します。ウグイス嬢の私たち二人は後部座席に乗ります。支援者の方々が出発する選挙カーに「いってらっしゃい、頑張っておいで」と声を掛けてくれます。さっそくお仕事開始・・・かと思いきや、初日ということで候補者の方が助手席に乗り、マイクを手にしました。私たち後部座席から窓を開けて、白手袋をつけて手を振り続けます。通りに誰もいなかろうとひたすら手を振り続けます。正直何をしたらいいか分からなかったので、ひたすら笑顔で手を振り続けました。

2月初旬。外は凍えるような寒さです。窓を開けている車内は暖房を入れていても全く効果がありません。後部座席には暖房の暖かさが届きません。振り続ける手が凍りそうでした。

8時から12時まで選挙カーに乗り、選挙事務所へ帰所。そこで支援者の方々が用意して下さった様々なお料理を頂きました。寒さのあまりに凍りかけた体が温かい豚汁で溶けていくようでした。そして1時間の休憩をとり、13時から14時までまた選挙カーに乗りスタートです。結局、初日はひたすら手を振り続けて終了でした。

2日目からいよいよウグイス嬢のお役目を果たす時がやって参りました。しかしながら・・・選挙権を得たばかりの私たち、選挙に行ったことがなかったし、選挙というもの自体何が何だかわからりませんでした。それでも仕事をしなければいけません。そして選挙カーの運転手の方に言われたのが、「名前を連呼してください」でした。ということで、ウグイス嬢デビューは候補者の名前をひたすら連呼して回ることでした。

そして対抗馬の候補者の選挙カーとすれ違う時は「○○さん(すれ違う対抗馬の候補者名)頑張って下さい」と言います。先に「頑張って下さい」と言われた場合は「ありがとうございます。○○さんも頑張って下さい」と言うという、基本のキを学びました。

そういえば、そんな光景を見かけたことがあるような気がしてきました。初日の選挙カーで覚えた凍えるような寒さ。ということで白手袋を二枚重ねにし、体中カイロをいっぱい貼って寒さ対策をばっちりにしました。ひたすら名前を連呼し、笑顔で手を振り続ける。これがウグイス嬢の仕事なんだと初めて知りました。でも、これは町議会議員選挙だからこそです。国政選挙では全く通用しない、あまっちょろい若造のウグイス嬢した。

3日目にもなると少し慣れてきました。お昼ご飯を頂くと、満腹感にひたり眠気が襲ってきます。そんな眠気と戦いながら心地よい揺れの選挙カーに乗ることは少し辛かったです。自分がマイクを持たないときは、思わず眠気に襲われて手を振るのがおろそかになってしまいそうでした。慣れというものはいけませんね。

4日目は3日目の反省を込めて、しっかりとお勤めさせて頂きました。

最終日の5日目。マイクを持つことにも随分慣れて、私たちはまるで昔でいうエレベーターガールのような声色を出すことができるようになっていました。人はこうやって訓練されていくのだと知りました。

自分が住んでいる土地をくまなく選挙カーで回り、今まで知らなかった場所や地名、それぞれの地域の特色を学びました。選挙に興味が全くなく、選挙権を得ても誰に票を入れればいいか分からなかったのですが、ウグイス嬢の仕事の経験を通して候補者の選挙公約(今でいうマニフェスト)をしっかり見るようになりました。それは今に続く『選挙感』というものを得ることできたのでした。そして、普段得ることができないことを学び、経験させて頂いたこのウグイス嬢の報酬が「おいしかった」のでした。

朝8時から14時、内休憩時間1時間で日給は2万円でした。 5日間お仕事をさせていただいたので合計金額は10万円。 学生の私には5日間で10万円という高収入、とてもおいしかったです。